ネルヴァル全集〈1〉、kashmir『てるみな 1』

ネルヴァル全集〈1〉 (1975年)

ネルヴァル全集〈1〉 (1975年)

一九世紀フランス、ネルヴァルはロマン派の詩人として活躍したのち、狂気に陥って自死を遂げた。彼が首を吊っていたヴィエーユ・ランテルヌ通りは「見出し得る最も汚い一角(ボードレール)」であり、当時フランスではそうした区画を一掃するべく、パリの改造計画が進行中であった。ネルヴァルが『ボヘミアの小さな城』で回想した昔日のドワイエネ通りはもはやなく、愛した街が整備されるにつれて彼の狂気も深くなり勝っていく。その果てに書かれたのが『幻想詩篇』などの名作だとしたら、なんとやりきれないことだろうか。

ダンテの地獄下りをモチーフにした『十月の夜』はパリ近郊での三日間の彷徨を描く作品。イギリス風のリアリズムに対抗して書いたとのことだが限りなく幻想的で、猥雑な巷の夜の情景、秘密結社、夢など、短いながら濃密だった。

てるみな 1

てるみな 1

猫耳少女がひたすら「乗り鉄」する幻想鉄道漫画。実際の東京の鉄道をインスパイアした路線の旅は、かなり気合の入った妖しい世界を見せてくれる。というか鉄道幻想を煮詰めに煮詰めて一応は可愛らしく仕上げてるのにやっぱり変な液がだだ漏れな感じで、ここまで濃いともはや鉄道なのかなんなのか。幻を求める人、「ここではないどこか」に憧れる人はぜひ手に取られたい。