マルグリット・ユルスナール『東方綺譚』、Mei(冥) Vol.2

東方綺譚 (白水Uブックス (69))

東方綺譚 (白水Uブックス (69))

オリエント世界に取材した短篇集。出自をヨーロッパに持つユルスナールの筆、そして極東の詩人である多田智満子の訳が、オリエントの幻想世界を東西から照射している。様々に議論喧しいオリエンタリズムという概念の下にこのように骨太な幻想世界が紡がれたことは、まさしく奇跡としか言い様がない。ひたすら美しさと残酷に酔った。

ヤンソン特集を読んであとはざっと流し読み。「境界の両義性」とか「ムーミンにギリシャ神話を読む」とか雑誌の対象的には大丈夫なのかと少し心配しながらも面白かった。冨原眞弓による「エンメリーナ」(再訳)もなかなか胸をざわつかせる作品で、ムーミンにしか触れていなかった自分を他のヤンソン作品に向かわせるには十分。北欧風の表紙がきれいなので本棚に飾っておこう。