マックス・エルンスト『百頭女』、ボルヘス『創造者』

百頭女 (河出文庫)

百頭女 (河出文庫)

147葉のコラージュ作品にキャプションが付され、ストーリーのようなものを感じさせるギリギリの均衡を保っている。図版が不鮮明なためか元からそうなのか、絵の中で何が起こっているかいまいち判然としないところがあって、できればもっと大きな版で読みたかった。とはいえ、混乱した筋をたどった後、終盤にくり返される「百頭女は秘密を守る」という言葉は、この万華鏡のような作品から受け取った個々人の幻想を保障するという風に受け取れて、はしなくも胸に響いた。それは百頭女が自身の秘密を守ることでもあり、幻想は各々の胸に秘められる。

創造者 (岩波文庫)

創造者 (岩波文庫)

編集者の突然の求めに応じて原稿をまとめたということで、散文ありスケッチあり詩ありと、いささか雑然としている。しかしこのまとまりのなさがむしろボルヘスらしさを直截に表しており、ボルヘスの人となりに興味があれば最適の一冊になるかもしれない。自分はどうせ掴みどころがないのだからとわりと気楽に読み進めていった。「創造者」「王宮の寓話」「学問の厳密さについて」あたりのまとまった話が好きだ。