ジョー・ウォルトン『ファージング』三部作

去年9月から現在までの読書記録を転載していきます。まあ適当に。

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

英雄たちの朝 (ファージングI) (創元推理文庫)

第二次大戦において英独が講和したという設定のシリーズ第一弾。英国を和平へと導いた政治派閥「ファージング・セット」はある貴族家庭を中心とした親族組織であり、その地所で開かれたパーティー中に殺人事件が起きる。わざとらしいまでにユダヤ人の仕業のように見える犯罪にはどんな思惑があるのか、ユダヤ人の夫を持つ女性と刑事の視点で交互に進む。ミステリの体裁をとりながらも徐々にマイノリティへの差別を利用した権力争いの様相を呈してきて、最後はしみったれた真相にうんざりすること請け合い。次巻以降でどう挽回されるのか楽しみだ。

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

暗殺のハムレット (ファージング?) (創元推理文庫)

ファージング・セットの台頭によって着実にファシズム熱が高まっていく中、英国を訪れたヒトラーや首相らが劇場にて『ハムレット』を観劇することになる。そんな時、主演女優を務めるヴァイオラは、妹を通じてテログループに引きこまれてしまう…。今回はテロ組織側のヴァイオラと警察側のカーマイケルで進められる。抗うすべもなくテロに引き寄せられるヴァイオラの葛藤、そして上層部に反発しながらも刑事としての職務を遂行せざるを得ないカーマイケルの行動が、テロの瞬間へと否応もなく焦点を結ぶ。サスペンスフルでよかったけどもうひとつ足りないな。

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

バッキンガムの光芒 (ファージング?) (創元推理文庫)

体制側の重要なポストを任されたカーマイケルは、それでもファシズムに抗う活動を続けている。しかも、ある事情から引き取った娘を抱えながら。その娘・エルヴィラは社交界デビューを目前にしてトラブルに巻き込まれ、徐々にファシズムの内実を知っていく…。いよいよ完結ということで、ファシズム熱に飲み込まれながらも綻びが生じてきた英国を舞台に、カーマイケルとエルヴィラは奔走する。様々に手を尽くし、それでも悪化する状況の末にたどり着いた挽回の一手。だがこれには思いっきり脱力。これがいいという人もいるだろうけど自分はちょっと受け付けなかった。