ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフの文学講義 上』

ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)

ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)

ナボコフの読みのスタイルは「精緻に読む」ことに尽きる。文学作品をまったくの「まやかし」と位置づけ、現実的な価値はまるでないものとして、その上でテキストに向き合って美を汲み上げようとする。単純明快、かつ根気のいる読み方だと思う。この上巻で展翅板に掛けられるのは『マンスフィールド荘園』『荒涼館』『ボヴァリー夫人』の三作。ただしこれらの作品に触れたことがない場合、隣室に用意された料理を匂いだけで味わうような講義になるので、あらかじめ作品を用意してあたられたい。