ジャン・グルニエ『エジプトだより』

エジプトだより

エジプトだより

序文においてグルニエは、正確な記述を心がけようとする旅行記に対し、それでは風景の佇まいや精神の働きをおろそかにしてしまうと述べる。帰国後十年を隔てて書かれた本書は印象を前面に出しており、回顧的なエッセイに近い。あるいは「ここではないどこか」を求めるのが旅だとして、結局そこに至った途端に「現在」に組み込まれるという嘆きを通して、グルニエも自身の圏域に囚われた人なのだと理解できる。

「私は結局他のすべての人と同じなのだ。自分にとって重要なことが他者にとっては何ものでもないということを信じることができないでいる」