『木坂涼詩集』、紀田順一郎『世界の書物』
とてもミクロな視線と特異な言語感覚で日常を切り取る。対象にぐっと入り込むというよりはさっと輪郭を撫でていく軽さで、口当たりはいいけどあまり好みではないかな。だんだん散文に流れていくのが残念だった。
小さなことが
いくつかかさなって
小鳥は
枝の先にとまって胸をふくらませた
枝はゆっくりとさがってゆれた
(「秤」)
古典81作を3ページずつ紹介。こういう本はどうしても教養主義的になりがちとはいえ、いくつかは戦後に青春期を過ごした紀田順一郎の人柄が窺えるチョイスだ。変わったところでは『易経』で易の思想を語っていたり、『国富論』『人口論』『戦争論』など文学以外にも目を配っている。随所に翻訳家らしい一面も。個人的には『白鯨』はいずれ集中して取り組まなければと思ったりした。