テリー・イーグルトン『詩をどう読むか』、ピエール・ガスカール『けものたち・死者の時』
文学の中でも詩は特別に創造的なものとされ、ゆえに神秘化されるきらいがある。だがそうした偏見を抜きに読むと、詩は言語の運用によって美を追求するという形で、実のところ他の分野と同じく政治的な力がせめぎ合う場である。本書は政治志向の強い批評家であるイーグルトンが、特に形式の面に注目して詩を読み込む。対象は英詩なのでざっと目を通しただけだが、詩を書くというのが読まれることを前提とした社会的な行為であって、それがどのような形式をとるかが問題とされるのは、納得のいくところ。こういう視点を持っておくのもいい。
ちょうど脚韻や韻律や響きがそうであるように、たいていの比喩もまた、差異と同一性との相互作用を含んでいる。直喩と隠喩が要求するのは、別々の要素がたがいに似ていると同時に、たがいに異なると認識されることだ。そして、それらの類似性に注目するほど、それらの差異が大きく浮かび上がる。
換喩、提喩も同様に。
- 作者: ピエールガスカール,Pierre Gascar,渡辺一夫,佐藤朔,二宮敬
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
動物テーマの中短篇集。人間と動物は並置され、その違いをくっきりと示しながらも、合わせ鏡のように同じ存在であることが見て取れる。日々の生活の中ではかろうじて動物になることを拒んでいる人間も、特異な状況下では動物の相貌を剥き出しにし、容易に境界を越えて生命と死の暗闇へと落ちる。わりと息が長く写実的な文章に幻想が匂うようなところが魅力。「ガストン」「猫」あたりの短いもののほうが良かったな。また、この人の短篇観が「手際のよさよりキラキラした異常性を」というもので好ましかった。