曇り空から縄が垂れている

どこに続いているのか先は見えない

午後になると近所のものが集まってきて

突如現れたこの縄について協議しはじめた

一人がおれが片付けてやると言って前に出る

触らないほうがいいと皆は止めたが

こういったあやかしには毅然と立ち向かうべきなのだと

遠慮なしにぐいぐい縄を引く

土から牛蒡を引き抜くようなものだと笑いながら

臆病者どもめと笑いながら

しかしどんなに引いても縄は尽きない

だんだんと日は暮れて暗くなってくる

男も焦ってきて いっそうがむしゃらに引く

と 急にものすごい力で縄が上に引かれ

男ごと空へ昇っていってしまった

しゅるしゅる という音とともに

わあわあ という声とともに

しゅるしゅる わあわあ しゅるしゅる わあ

皆が呆然と立ちすくんでいる間にも

みるみるうちに縄はすっかり空に引き上げられ

それきり男の姿も見られなくなった