『ヘリック詩鈔』、『和泉式部日記』

ヘリック詩鈔 (1982年)

ヘリック詩鈔 (1982年)

ロバート・ヘリックは17世紀王党派の詩人・聖職者。寡聞にして知らなかったが重要な詩人とのことで、読んでみたらこれが案外良い。田舎の知識人が気取りと茶目っ気を交えて書いた手すさびという感じで、おかしみのある素朴な詩には大いに和まされる(召使を死んだことにして哀歌を書いたりしてる、笑)。かと思えば「今日を楽しめ」式に世の無常や儚さを詠い、あるいはその裏にしたたかな顔が透けつつも、のんべんだらりと読むにはいい。

本書はのちに岩波文庫入り。確認したら岩波の『イギリス名詩選』にも二篇選ばれていた。

和泉式部日記 (岩波文庫)

和泉式部日記 (岩波文庫)

恋多き人として知られる和泉式部と帥の宮の間に交わされた贈答歌集。言ってしまえばラブレター集なのだが、高度に様式化されてハイブロウゆえ、詩によるコミュニケーションの極致を見る心地がする。とはいえメールの社交辞令さえ苦手な身にしてみれば、憧れながらもこれは絶対無理だなと醒めた気持にもなった。式部の経歴を前提に読めばさらに味わいが増すことだろう。