2013-09-09 暗峠 詩 奥は暗くておそろしければ… 和泉式部 ふいに戸を閉められて 暗い場所に置き去りにされてみれば 息をするのもままならぬほどで 手探りで進む手に 布がひらひらとまといつく 天井に着物でも吊るされているのか 探っても探っても壁はなく 道行きの果ては底知れず ただ衣ずれの中を進んでいく それが幾晩も続いて ついに耐え切れず 懐から取り出した火打ち石を がちりと打ち鳴らすと 火花は空中にはじけ飛び 燃え移った闇に一瞬だけ 無数の首が浮かび上がり 笑いや怒りを含んで 山頂のほうまで延々と 人の顔の連なりであった