吉村正和『フリーメイソン』、堀淳一『地図のワンダーランド』

フリーメイソン (講談社現代新書)

フリーメイソン (講談社現代新書)

いまいち実態の掴めないフリーメイソンについてよくまとまった好著。起源は諸説あるものの、当初は社交クラブとして発足したフリーメイソンは、かたや西欧文明を貫流する神秘主義の性格を持ち、かたや啓蒙主義・理神論・科学主義を取り込んでいった。といっても神秘主義の面は道徳的な象徴でしかなく、神性を目指すことが自己の涵養に、ひいては社会の完成につながるといい、自己と社会の実現を理念によって後押しする組織と考えるのが実態に即している。そうした理念がアメリカという大国を用意した事実に西欧の凄みを感じずにはいられなかった。

地図のワンダーランド (小学館ライブラリー (113))

地図のワンダーランド (小学館ライブラリー (113))

新聞連載のエッセイをまとめたもの。軽い読み物ながら楽しくてためになるトピックと図版が満載だった。地図は製作者・使用者の世界観が如実に示されるゆえに、そこにあるものを読み解けば様々な認識にアクセスできる。想像力を遺憾なく発揮した象徴もあれば、地図記号には錬金術の記号が流用されていたり、地名には歴史や物語が刻印されていたりする。今後はもう少し意識して地図を「読んで」みたい。個人的にはアイヌ語地名の響きの美しさに惹かれた。

アイカップ、アショロ、アッケシ、テシカガ、オトイネップ、オシャマンベ、オショロ、ニウプ、パシクル、ノトロ、ヒチリップ、ピップ、ピリカ、トウヤ…

あと「地図というものはすべてデフォルメ地図」との言葉も覚えておきたい。ある種の真理なので。