失われたドワイエネ礼拝堂の廃墟
リナ・ジョネス画『ドワイエネ礼拝堂の廃墟』 Lina Jaunez
ネルヴァルは過ぎにし青春を回顧する『ボヘミアの小さな城』で、今はないドワイエネ街(Doyenné)で仲間と暮らした日々の思い出を綴っている。その中の一節。
「我々の宮殿はとりこわされた。過ぐる秋、私はその廃墟を歩いてみた。樹々の緑の上にあのように優美に身を現していた礼拝堂の廃墟は――そのドームは、十八世紀に、或る日お勤めを誦えるために集まっていた六人の不運な修道士たちの頭上に崩れ落ちたのだが――やはり何の顧慮もなくこわされてしまった」
言及されている崩落事故は1729年10月に発生。
旧サン=トマ・デュ・ルーヴル教会の一部であった礼拝堂の廃墟は事故後の姿をとどめていたが、1850年代はじめ、ナポレオン三世治下のルーヴル改造計画によって消滅した。