不忍ブックストリート 第15回 一箱古本市

4月27日に谷根千で開催された一箱古本市に参加してきた。当日は暑いくらいの快晴。日暮里の駅で降りて、なぜか谷根千とは逆方向に出てしまって30分ほど迷った後、ようやく気づいて谷中銀座の坂上へ。マップを眺めつつそこの雑居ビルに店を構える『古書 信天翁』にまず入った。ここはアート関係の書籍が充実している。最初に見つけたところなので少し奮発して、シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー『妖精たちの王国』、ジョージ・マクドナルド『ファンタステス―成年男女のための妖精物語』を購入。レジ周辺には古い絵葉書が置かれており、その中からアルマジロの絵葉書を一枚選んだ。今日一日の通行証のようなものになればと。

昼を前に賑わう谷中銀座を通り抜けて一箱古本市の起点へ向かう途中、軒先に少しだけ本を並べた『ブックス&カフェ・ブーザンゴ』に入る。普段は古本販売とともにカフェをやっているようだが、この日は早かったようでカフェは準備中だった。フィオナ・マクラウド『ケルト民話集』、ワシントン・アービング『アルハンブラ物語』、マルセル・ベアリュ『水蜘蛛』を購入。こじんまりとした店で置いてる本のセンスがとても良い。できれば後日あらためて再訪したい。

余談、ここで見かけたギュンター・グラス『鈴蛙の呼び声』のあらすじがむっちゃ良い。

「たがいに伴侶をなくした男と女が、死者を悼む万霊節の日、花屋の店先で出会う。赤錆色のアスターを買い、墓地をめぐり、一緒に茸を食べる」

一箱古本市の起点に選んだ『往来堂書店』に到着。もう結構賑わっている。金井美恵子『アカシア騎士団』を買い、売り子の方と「金井美恵子ってあまり知り合いにいてほしくないタイプですよね」「遠巻きに見ていたい感じですよね」などと話して、店を冷やかしながら移動する。住宅街の中に位置する『古書バンゴブックス』に入る。全体的に理系っぽいというか変わった品揃え。ギョーム・アポリネール『一万一千本の鞭』、シャーリー・グリーン『避妊の世界史』をゲットした(ひどい組み合わせ)

「へび道」という住宅街の中の道をくねくね進む。老人ホームの中のスペースでクリスタ・ヴォルフ『ギリシアへの旅』(写真の使い方がゼーバルトと一緒)など何冊か。きれいな栞をもらった。

寺院の多い区画を次のポイントへ。築地塀に沿って進むと古民家ベースの貸しスペースに店が出ていた。五歳くらいの女の子がスタンプラリーのスタンプを押してくれる。シーセル・ロス『ユダヤ人の歴史』など何冊か。

次のポイントではなぜか売られている飯碗の前で迷った末に断念して、夜店通り沿いにある劇場へ。

地下に降りると客席を取り払って店が出ていた。この時点ですでに二時過ぎ。半額値下げの店で『横尾忠則 Y字路』を、SF・幻想文学寄りの店で『現代ドイツ幻想小説』などを。きれいな蔵書票が売られていてつい手が伸びた。劇場を出て次のポイントでは谷川渥『肉体の迷宮』を発見。

三時を過ぎてようやく終点の『古書ほうろう』に到着。実はまだ回れてないポイントがあったのだけど、時間的に無理そうなので諦めた。最後は一箱市に関係なく普通に古本屋の棚を眺める。大航海時代叢書の『ヌエバ・エスパーニャ布教史』が安い。あ、『マンク』がある。ね、ネルヴァル全集が…! と疲労でトリップ状態のまま本を抱えてレジに行くと、店の方が「あ、これ(マンク)下巻ですよ」と教えてくれた。危うく買うところだった。ネルヴァル全集は買ってしまった。

これにて一箱古本市+古本屋巡り終了。スタンプラリー形式って回ってるうちに疲れて感覚が狂ってどんどん買ってしまう。あと超重い。谷根千の雰囲気はとても良くて、次はイベント関係なくぜひ遊びに来たいと思う。おつかれさまでした。