ジョージ・マクドナルド『黄金の鍵』

黄金の鍵 (ちくま文庫)

黄金の鍵 (ちくま文庫)

「巨人の心臓」「かるい姫」「黄金の鍵」「招幸酒」を収録。このうち後者の二篇は既読だが訳が違うので新鮮な気持ちで読めた。マクドナルド作品で描かれる異界は甘やかでありながらも危険に満ちている。それは単に甘いだけの夢ではなく、一歩間違えば獰猛にこちら側に襲い掛かってくるもの、限りなく死に近いものである。だからこそ魅惑的でもあるし、生と死の拮抗の中に魔力が宿り、そして時には死生のカテゴリーを飛び越えてしまう。「黄金の鍵」の神話的なムードはそのあたりに因があるのだろう。