笠原伸夫『評釈「天守物語」』、フーケー『水妖記―ウンディーネ』

 

評釈「天守物語」―妖怪のコスモロジー

評釈「天守物語」―妖怪のコスモロジー

 

 「現世において見棄てられ、切り棄てられ、陵辱された末に幻影化した者たち」、妖怪とはそのような存在であり、現世とつかず離れずの闇の中に棲んでいる。だからこそ現世に対する批評的役割を担うこともでき、自由であると同時に現世に縛られもする。地上と天上を結ぶ「天守」の空間に出会う二人の恋は、光と闇の相克の中で演じられるのだ。

 

水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)

水妖記―ウンディーネ (岩波文庫 赤 415-1)

 

 魂を持たない水の精(ウンディーネ)が騎士に恋をして魂を得る…というのはいいのだけど、あとはひたすら裏切られて零落していく。騎士の心変わりや茶々を入れる女の性格があまりに不自然で、ウンディーネの破滅ありきで話が進むのが感じられてしらけてしまった。ウンディーネにしても魂を得た途端に貞淑になるってなんだかなもうという感じ。結局、人間に拒まれた異類の側の悲劇で、それを消費するのはどういうことだろうと考えこんでしまう。