澁澤龍彦『ねむり姫』、『窪田般弥詩集』

 

ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫

ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫

 

 いつものエッセイ調をさらに丁寧にしたような文体で、物語っている対象から常に距離を取っているがゆえにアクロバティックな視点の移動や現代的な感性による批評まで加えられる。それが一種の眩惑を生んでいる。物語の虚構的な側面をあからさまに晒しているわけで、過去あったことの再現というよりは人工的な箱庭の夢のあらましを聞いているようで楽しかった。球形幻想や相姦のオブセッションが見えるのもいい。

 

窪田般弥詩集 (現代詩文庫 第 1期62)

窪田般弥詩集 (現代詩文庫 第 1期62)

 

 象徴主義の典雅な詩を書く。たとえば岩とか凧とか、有名な詩だと烏賊とか、そのものを通して人間の実存が浮かび上がってくるような。古風な言葉遣いでそれはそれで美しいのだけど、どうしても広がりがない気がして個人的にはあまりぴんとこなかった。フランス詩の高踏的なテンション、その裏にひっそりと通じる日本的な感性といったところかな。