鈴木牧之『北越雪譜』、澁澤龍彦『狐のだんぶくろ』

 

北越雪譜 (岩波文庫 黄 226-1)

北越雪譜 (岩波文庫 黄 226-1)

 

 「凡日本国中に於て第一雪の深き国は越後なりと古昔も今も人のいふ事なり」 江戸時代の越後の風俗を集めた百科全書。殊に雪の脅威については紙幅が割かれており、南国の人々にこれを以って雪国の現実を知らしめようとする執念が感じられる。雪国の風俗の一々が楽しく、奇聞に属するものまで紹介されている。幽霊や妖怪などの怪しい出来事はもちろん、自然科学的な部分が現在の目からすれば面白かった。

 

狐のだんぶくろ―わたしの少年時代 (河出文庫)

狐のだんぶくろ―わたしの少年時代 (河出文庫)

 

 昭和初期に少年期を過ごした著者の徒然な回想録。終戦とともに青年期に入ったというくらいで、感性の揺籃期であったこの時期に、後の才人がどのような環境にいたのかを覗き見ることができる。澁澤の看板を抜きにしても、中流から上流寄りの東京在の一少年の生活が垣間見れて興味深い。さすがに筆が巧くてするすると読めるのもよかった。