『山本道子詩集』、斉藤洋『うらからいらっしゃい』
初期は自意識の檻の中で奔放な感受性に振り回され、詩は悲嘆の色に染まるとともにそれを受け入れて、次いで散文へ、最後に小説に辿り着く。閉じこめられた場所を最初は「檻」と認識していたのが「家」に変わり、そこでの生活を記述するには詩では収まらなかったのだろう。詩は小説に移行する直前の作が円熟を感じさせて好きだが小説もなかなかいい。本書に収録されている短篇「老人の鴨」などは面白いのか面白くないのかうだうだと読み進めていくうちになんともいえない嫌な感情を呼び覚ましてくれる。後に芥川賞を受賞。
うらからいらっしゃい―七つの怪談 (偕成社ワンダーランド (30))
- 作者: 斉藤洋,奥江幸子
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 2004/10
- メディア: 単行本
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怪談クラブシリーズの二作目。7人が怪談を持ち寄って披露する趣向で、この怪談の会が催されるシチュエーションが抜群に良い。大学構内にある人気のない研究棟の一室、季節は夏、小学生の主人公が大学生に混じって怪談を聞く、おやつに冷やし中華もある…という夏の暑さ騒々しさの中のエアポケットのような空間。しかもそこに集まって怪談に興じる人々もどうやら普通の存在ではないようで…。それにしてもこのシリーズ、小学生の頃に選定図書を購入できるシステムがあってその時に出会って以来になる。縁があれば次もぜひ読みたい。