みやま文庫『群馬の昭和の詩人』、岩佐なを『霊岸』

みやま文庫『群馬の昭和の詩人―人と作品―』

5人の詩人を紹介している。中でも岡田刀水士の人と作品についてを集中的に読んだ。萩原朔太郎に師事し、群馬県内の学校や国鉄に勤めながら同人誌等で活動。この本では詩集『幻影哀歌』を、抵抗意識によって幻影の側に立ち、運命そのものと人間存在の不条理性を告発するものと特に強調している。続く『灰白の蛍』は<死者実存>を拡大させ、それが文明の合理や秩序を破壊してくれると思うまでになるという。思ったより苛烈な人なのかもしれない。

 

霊岸

霊岸

 

 再読して気づいたのだけどドッペルゲンガーらしきものが現れる詩がいくつかある。自分で自分を追いかけるというようなこれは客観性の現れであって、詩人の視点はこの世の外に位置して自身を含めた世界を眺めているのかもしれない。だからこそ普通の人には見えない実相が見えて、それを客観的自己が「良し」とする。版画家でもあることを考え合わせると、一回的に生まれたものに批評眼で相対して、それを活かすか殺すかというテクニックがおそらく詩作にも通じているのではないか。