『関根弘詩集』、師岡宏次『銀座残像―写真集』
都市の詩。自分とは関わりのない人々がすれ違っていき、各々が生きた存在を主張している、その悲哀を掬い上げる。「わが家の近くの工事現場は/夜昼となく働いて/ぼくの住めない立派な家を建てている」(「現場」) 左翼詩人ということで運動的な詩がありつつ、マザーグースを思わせる筆致がまなざしの優しさを際立たせる。左翼であるということが自分ではなく社会を描く方向に向かわせている。
忘れちゃイヤだよう
目がつぶれても
ぼくはまだ人形だよう
かけらになっても
ぼくはまだ鏡だよう
(「ゴミ箱の火事」)
新宿や池袋が発展する前は東京第一の街であった銀座、その150年の歩みをビジュアルで見る。明治初期に火災対策のため煉瓦建築の導入、戦時中に爆撃で廃墟と化すが、こうして見ていくと時代劇のような江戸の町並みから現在まで一貫するものを感じる。古くから営業を続ける店もいくつかある。