ジャン・ポール・クレベール『動物シンボル事典』、高山宏『近代文化史入門』

動物シンボル事典

動物シンボル事典

神話や伝承の世界には人間の思いもよらない動物が無数に棲んでいる。現実に生きて存在するものもいるし、中には想像力によって創りだされた異形の怪物もいる。本書はそうした動物シンボルの数々を、それが象徴するところは何なのか、どのように想像されてきたのかを、事典の形式で集大成する。といってもさほど堅苦しくはなくて動物綺譚集として気楽に読める。西欧を中心とした選と解説とはいえ、図版の充実ぶりはまことに目を見張るほど。折々参照していきたい。

「ノアが、その方舟に各種一つがいの動物を乗せるよう命ぜられたとき、彼の目の前を、魚と水生動物をのぞく全ての動物の代表が列をなして進んだが、彼には未知のものもあった。方舟の中には、魔法使いの想像力や旅行者の紀行談がでっち上げたような魔物やありそうもない生き物も彼の目をごまかして紛れ込んだはずである」

近代文化史入門 超英文学講義 (講談社学術文庫)

近代文化史入門 超英文学講義 (講談社学術文庫)

17世紀~20世紀の視覚文化、ひいては文学・美術・博物学…と様々な領域を横断し、まるでモザイクのように全体が繋がっているさまを解明する。著者が言うところの「マニエリスム」の方法論を用いて、あるものがまったく無関係(に見える)な別のものと接続していくのは、ちょっと言葉にならないくらい面白く興奮させる。入門の名に相応しくブックガイドとしても有用。ただ個人的には紹介されていた何冊かに先にあたっていたので、事後確認っぽくなって少し損をしたかも。これから知の冒険に臨もうとされる方はまず本書をぜひ。